第7次医療法改正の概要
医療法改正には2つの大きな柱があります。
1、 地域医療連携推進法人制度の創設
2、 医療法人制度の見直し
です。
行政書士業務として依頼が多いのは2の医療法人制度の見直しです。今回の改正では医療法人の経営の透明性の確保及びガバナンスの強化に関する事項が盛り込まれました。
平成19年に施行された第5次医療法改正では、非営利性を強化する目的で、新規の医療法人の設立は「持分無し」に限定されました。※既存の持分のある医療法人は「経過措置型医療法人」と位置づけられています。
今回の改正は、さらなる非営利性の強化のために、医療法人の会計基準や役員と特殊な関係がある業者との取引の状況に関する報告書の作成、理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等、医療法人の経営にかなり踏み込んだものとなっています。
ではその内容を説明していきます。
⑴ 医療法人の経営の透明性の確保
① 理事長の選任方法
改正前の医療法では医療法人の理事長は
⒈ 理事の互選で定める
⒉ 理事会で理事の中から選出する。
の2つの方法のうち、いずれかを選択出来ました。
一人医師の医療法人の多くは⒈の理事の互選で理事長を選任しています。
それが今回の改正で⒉の理事会で選出しなければならなくなりました。定款変更していないと2年に一度の理事長の重任登記に支障が出てしまいます。
② 役員報酬の決定手続
理事の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、社員総会の決議によって定めることとなりました。
③ 監事選任時の監事の同意及び監事報酬の決議
監事は、本社団の業務又は財務の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3月以内に社員総会及び理事会に提出することが義務付けられました。また理事報酬と同様に、監事報酬も社員総会による決議が義務付けられました。
④ 理事長の業務状況報告
医療法人の理事長は3か月に1回以上、又は4か月を超える間隔で2回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならなくなりました。
※報告内容の例 予算執行状況・融資の実行状況・厚生局適時監査用の結果など
⑤ 役員が負う損害賠償責任
⒈医療法人の監事は、その任務を怠った時は、当該医療法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う義務が課せられました。
⒉役員等は、医療法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等が損害を賠償する責任を負う時は、これらの者は連帯債務者とすることとなりました。
その他にも負債額や収益額が大きい医療法人には外部監査が義務付けられたり、財務諸表の公告義務が課せられたりしています。
いずれも定款変更が必要になります。