「一般貸切旅客自動車運送事業の許可」とは、いわゆる貸切バス事業を経営するための許可の事です。
以前はこの許可、一度取ってしまえばあとは年に数種類の決算書類等を管轄の運輸支局に提出するだけで良いものでした。しかし平成29年4月より「更新制」になりました。
当然、度重なる貸切バスの重大事故が原因なのですが、決定的だったのが平成28年の軽井沢のスキー旅行バス転落事故です。乗員・乗客41名中15人が死亡したこの悲惨な事故を受けて、国土交通省は迅速に法改正で対応しました。
そういった背景で法改正があった、この貸切バス事業の許可更新制度。許可要件が非常に厳しいものになっています。国土交通省はまさに不適切に経営している貸切バス事業者を潰しにかかっているという印象です。では更新時にネックとなる事項を整理して説明します。
1、代表権を有する常勤役員が「法令試験」に合格しなければならない
正直これが更新申請における一番のネックになっています。なんの準備もせずに受験しようものなら、100%不合格です。頑張って更新申請年度の直近決算で債務超過を解消しても、この法令試験に合格しなければ許可の更新はできません。ではどのくらい難しいのか説明していきます。
- 「代表権を有する常勤役員」が受けなければならない。
代表取締役が受けなければなりません。80歳以上の高齢の社長さんもいるでしょう。体調がすぐれない社長さんもいるかもしれません。しかし代表取締役が試験に合格しないと要件を満たせません。
- 合格ラインは正答率90%以上
九州運輸局管内の法令試験は、全40問で構成されています。正答率90%以上ということは5問間違えたら不合格ということです。36問正解して合格です。
- 追試は1回きり
追試が不合格になると、運行管理者研修(3日間)を受講して1回の再追試受験の資格を取得しなければなりません。ちなみに1年以内に合格しないと不許可処分となり、廃業です。
※貸切バス事業者安全性評価認定制度において1つ星以上を獲得していると免除と
なります。
この試験は本気で準備をしないと、まず合格できません。ちなみに運行管理者試験の参考書は数多くありますが、一般貸切旅客自動車運送事業の法令試験の参考書は存在しません。
しかし、ご安心ください。行政書士 藤原知倫事務所では、全国の法令試験の過去問を集め、出題の傾向を分析し、200ページほどの問題集を作成しております。先の法令試験では、40問中39問の出題的中率だったとの事です。(試験問題は持ち帰ることができないため、受講者の感想です)この問題集と六法の引きかたをしっかりと学べば問題なく合格できます。
2、財産的要件
許可を申請する年の直近1事業年度において事業者の財務状況が債務超過であり、かつ直近3事業年度の収支が連続で赤字である場合、更新の許可は下りません。
私の経験でいえば、直近決算を増資等で何とか債務超過を解消した場合などは、特に運輸局の担当者の申請書類のチェックが非常に厳しくなるイメージを持ちました。
運転手の給与や車両等の減価償却費、一般事務費などもチクチク指摘を受けました。許可要件をギリギリで満たす場合は特に財務状況はしっかりと確認する必要があります。
3、安全投資計画及び事業収支見積書
こちらの書類が今回の更新申請の「キモ」の部分です。決算書類と輸送実績報告を基にして作成していきます。この安全投資計画と事業収支見積書の数字(運転者の給与や厚生福利費、車両修繕費渡等)と資金の内訳書や明細書の数字が合致していなければいけません。とにかく慣れていないと時間がかかる書類です。
以上、一般貸切旅客自動車運送事業の更新申請についての大まかな注意点を書き出してみました。正直、新規申請よりも更新申請が行政のチェックが厳しいと感じています。
今回の法改正では、明確な行政側の狙いが感じ取れます。それは、「貸切バス事業者を減らしたい」というものです。
当事務所では、更新申請の手続きはもちろん、法令試験のフォローアップに力を入れています。全力で許可取得に臨みます。お気軽にお問合せ下さい。